大分県中津市では、デジタルツールを取り入れ住民サービス向上や業務改善に挑戦した職員を表彰する『Nakatsu DX Award 2021』を昨年度実施しました。
この記事では、『Nakatsu DX Award 2021』開催の背景や授賞式当日の様子、また今回トラストバンク賞を受賞した職員のインタビューもご紹介いたします!
(取材日:令和4年3月29日)
◆ お話をお伺いした方(所属は取材当時)
■行政経営改革・デジタル推進課
課長 森下泰介 様
主任 中尾修大 様
■保険年金課
主事 小田瑛里奈 様
大分県中津市
◆人口:83,283人(令和3年10月1日現在)
◆世帯数:40,358世帯(令和3年10月1日現在)
◆予算規模:416億300万円(令和3年度 一般会計当初予算)
◆面積:491.44 km²
目次
Nakatsu DX Award 2021を主催した森下さん、中尾さんに開催への想いをお伺いしました!
■Nakatsu DX Award 2021(以下アワード)の概要について教えてください。
本アワードは、職員が日頃感じている課題に対して、自らデジタルの視点を持ってソリューション開発をする取り組みを職員自身で応募してもらい、ノミネートされた作品に対して職員同士が投票して受賞者を決定する取り組みです。
昨年10月下旬から企画が開始し、11月11日には全庁で募集を開始しました。令和4年の2月28日まで3か月超に渡って募集期間を設けた結果、全部で28の取り組みの応募がありました。この応募に対し、職員が良いと思う活用アイデアに投票をして受賞者を決定しました。
ノミネート作品はすべて専用サイト(Nakatsu DX Award 2021)で公開しています。
募集期間は3か月と比較的長期間設けた背景としては、すでに活用実績が出ているものだけの応募ではなく、これから取り組んでいくアイデアベースのものも応募できるようにしたかったからです。実際に形になっていなくても、職員自身のアイデアと想いを聞いて、行政経営改革・デジタル推進課が伴走し、形にするところまでサポートしました。
■アワードを開催しようと思った背景・経緯について教えてください。
開催趣旨としては、DX推進よりも、組織の風土を一層チャレンジできる空気に変えていきたい、という目的がありました。特にデジタルツールとの相性がよい若手職員については、本企画であればどんどん挑戦してもらえると考えました。また、兼ねてから職員を表彰する機会を作りたいと考えていたので、ただのイベントではなく、アワードという形としました。全職員が楽しく参加しながら、ボトムアップ型でデジタル化への機運が高めていける機会になるのでは、と考え、行政経営改革・デジタル推進課一丸となって開催に向け取り組みました。
■TB特別賞を設置した背景(設置しようと思った理由)を教えてください。
職員を賞賛する際に、外部視点は大切だと思ったからです。今回は職員投票によって受賞者が選ばれましたが、将来的には中津市の住民の皆様にも応募や投票に参加してほしいと思っています。今回は第一弾として、システムの開発元であるトラストバンクさんに外部視点から選んでいただくことで、職員のモチベーションアップにつながればと思い、トラストバンク特別賞を設けました。
また、もう一つの理由としては、行政DXが進むことで自治体と事業者の関係が変わってきているという感覚があったからです。これまでは発注者・受注者という関係性でしたが、LoGoチャットなどコミュニケーションツールを通じて開発元であるトラストバンクさんとの関係性を築くことができ、今では地域を一緒によくしていくパートナーのような感覚があります。そんな思いからも、新しい官民連携の形として、トラストバンク賞を設けてみることに至りました。
■開催してみていかがでしたか。
思ったより注目をしてもらえたように思いました。庁内でも、投票期間中に「今どれが一位なの?」と声をかけてもらえることが多かったです。
開催により実現できたこととしては、より多くの職員に、庁内で生まれている多くの取り組みを紹介できたこと、そしてそれを知ることで職員自身のモチベーションアップにつながったことですね。意外と庁内での取り組みを他の課では知らないことがあります。今回のアワードで応募作品を公開したことで、各課でのチャレンジングなアイデアや成功事例を全庁に共有することができました。実際に投票をする際に、他の課での取り組みを知って、刺激を受けた職員も多かったようです。
トラストバンク賞を受賞した小田さん
■今回はどのような申請をオンライン化(試作)されたのですか。
今回オンライン化した申請は全部で以下の3つです。
・はり・きゅう・あん摩マッサージ施術料助成金支給兼口座登録申請
・高額療養費支給申請
・保険証再交付申請
これまでの申請方法は窓口もしくは郵送による紙の受付のみでした。各申請の申請件数ですが、はり・きゅう・あん摩の申請は年間で約2000件、高額療養費の申請と保険証再交付申請はそれぞれ年間で約400~500件あります。
上記3つの申請のオンライン申請は現在庁内で準備を進めており、令和4年度から順次オンライン申請の受付を開始できたらいいなと思っています。
■3つの申請には、どのような課題があったのでしょうか。
課題はいくつかあります。まず、申請書の切り替えの時期になると窓口が混雑することです。そして、申請書を記入する際のミスや、記入漏れといった不備が多かったことも課題でした。また、申請に委任状が必要な場合、そのことをご存じなく来られた方には、もう一度委任状を持って窓口に来ていただく必要もありました。総じて住民の方にとっての利便性が低く、対応していた職員としてもなんとかしたいと思っていた手続きでした。
■オンライン化した感想を教えてください。
現段階では実装前のアイデアになりますが、実現したら申請不備が大幅に減りそうだな、という印象があります。特に記入誤りの多い口座情報もLoGoフォームから記入すると、金融機関名や支店名から選べるので、記入ミスが減るのではないかと思っています。また、委任状が必要な申請についても、オンラインであれば窓口に来ることが難しい本人自身が遠隔で申請できるようになるので、委任を受けた方が何度も窓口に来る必要もなくなりますし、入力の不備も減ると考えています。
■オンライン化を推進する上で、苦労した点はありますか。
申請者の負担をできるだけ減らすために、入力する申請項目や表示項目を減らしました。大変だった点としては、紙の申請書に比べて記入が必要な項目は少なくなりましたが、その分選択肢ごとに記入させる項目の分岐設定を設ける等、少し複雑になったところが大変でした。ただ、ITが得意な職員にたくさん教えてもらうことができたので、なんとか作成することができました。
■周りからの反応はいかがでしたか。
今回は庁内で開催しているDX人材の育成研修である「DXスクール」を受講したことをきっかけに、身の回りの業務をオンライン化してみました。もともと国保係の担当部署では、オンライン化できる申請の棚卸までは終わっていましたが、業務が忙しいこともあって、なかなか形にするところまで至っていませんでした。そんな背景もあったので、今回3つの申請をオンライン化できたことは、同じ課の職員からもとても喜んでもらえました。
なお、令和4年度は上記の集中型研修に加え、各階層別、習熟度別の総合的なデジタル研修計画を策定し、この計画を「DXスクール」と称して実施することにしています。
庁内の業務でも、デジタル化することでもっと効率化できる部分があると思っています。例えば、住民から受け取った申請を確認のために他の部署に回すことも多いのですが、例えばそれを電子化してみたり。ただ、そのためには自分たちの課だけでオンライン化を進めるのではなく、他の部署も一緒に取り組みを進めていく必要があると感じています。R4年度から部署を異動しますが、異動後の部署でもオンライン化に積極的に取り組んでいきたいと思っています。
最後に、中津市のこれからについて
■今後、中津市ではどのようにDXを進めていきたいですか。
中尾さん
令和3年度ではそれぞれの部署で市民サービスの向上につながるような様々な取り組みが生まれ、職員とデジタルツールを繋げる一年でした。次の一年は、市民に届ける一年だと思っています。広報部門とも連携して、デジタルコンテンツを活用した情報発信も強化し、市民や事業者の皆さんに必要な情報をしっかりと届けていきたいです。
森下さん
これまでの取り組みは、自治体が民間に比べて遅れていた部分を民間並みの水準に向上させてきた水準だと思います。その後どうするかと考えたときに、自治体が持っている「データ」をどのように活用するのか、どのように新しい価値を生み出していくというところにヒントがあると思っています。まだまだ先の話になるかもしれませんが、自治体が持っているデータをはじめとした様々な資産をどのように活用して住民に還元するのか考えていきたいです。
編集後記
インタビューにご協力いただいた中津市のみなさん、本当にありがとうございました。表彰式当日はトラストバンクのメンバーもオンラインで参加させていただきましたが、どの職員の皆様も本当に楽しそうにDXの取り組みについてお話されていることが印象的でした。
これから中津市がどんなDXの楽しい仕掛けを見せてくれるのか、大変楽しみです!今後も中津市のDXから目が離せません!