東京都の多摩地域では、26市で構成される「東京都市長会」によって、市民の利便性向上に資する様々な取組が推進されています。令和4年度は、東京都内の市役所における行政手続のデジタル化を推進することを目的に事務処理効率化推進事業を実施しました。なかでも市民からの要望の多かった「学童クラブの入所申請のオンライン化」については、昭島市様、福生市様、羽村市様が3市でLoGoフォームを活用し、市民サービスを充実させております。
今回は、本取組におけるオンライン化の経緯や、3市連携による取組内容を伺いしました!
(取材日:令和5年4月20日)
- お話をうかがった皆様
- 従来の申請手続きは、窓口・郵送等で受付後、職員がシステムに手入力
- 複数自治体で情報交換をしながらオンライン化に取り組む
- オンライン申請導入後、約2割~4割程度がオンラインで申請
- オンライン申請利用者の満足度は95%以上!
- 複数自治体で連携し、行政手続オンライン化に取り組む意義
お話をうかがった皆様
・東京都昭島市(人口 114,279人*)
総務部デジタル戦略担当 係長 柴田 樹里氏
子ども家庭部子ども子育て支援課学童クラブ係 主事 小松 美香氏
・東京都福生市(人口:56,055人*)
企画財政部情報政策課情報政策係 主任 五十嵐 哲氏(写真左)
子ども家庭部子ども政策課子ども政策係 主任 山中 菜生氏(写真右)
・東京都羽村市(人口 54,386人*)
企画部情報政策課情報化推進係 係長 浦 辰徳氏(写真左)
子ども家庭部子育て支援課児童青少年係 主事 迫田 貴博氏(写真右)
*令和5年4月1日時点の人口
従来の申請手続きは、窓口・郵送等で受付後、職員がシステムに手入力
ー今回オンライン化をされた「学童クラブの入所申請」ですが、オンライン化する前はどのような流れで受付をしていたのでしょうか?
羽村市:羽村市の場合、これまでは市役所の窓口一本で受け付けていたので、基本的には保護者の方が市役所に来て、紙の申請書類をご提出いただく形で受け付けていました。受領した紙の情報は、基幹システムに手打ちで入力をして、判定審査に必要な紙の資料を作成し、職員が判定をしていました。すべての流れにかなり工数がかかっていましたが、特にいただいた書類を手打ちで入力する作業はミスがあってはいけないので、慎重に進める必要があり、件数も受付期間内の申請が600件ほどあるためかなりの時間がかかっていましたね。
昭島市:昭島市では、市役所の窓口と各学童クラブで申請を受け付けており、コロナ禍以降は郵送での受付も開始していました。実際の申請内訳としては、郵送はあまり多くなく、基本は窓口と学童クラブで受付をしていました。受付後は羽村市さんと同じく、申請書類を確認して、システムに手入力する流れですが、年間1500件弱受け付けており、4月が特に集中して申請があるので、入力作業は2名体制で実施していました。
福生市 :福生市においても市役所の窓口と学童クラブでそれぞれ受け付けていましたが、どうしても受付期間は窓口での対応が忙しく、常に職員が窓口にいる必要がありました。学童クラブで受付をする場合、保護者の方が学童のお迎えの際についでに渡す形になるので、その場で十分な書類のチェックができず、再度の確認に時間がかかったりしていました。大きな不備があると、電話を掛けて確認をしたり、改めて窓口まで来てもらったりして、さらに時間をかけて対応をしている状況でした。
ー住民側の手続きだけでなく、職員のみなさまの業務にも大きな負担となっていたんですね。その後、どのようなきっかけでオンライン化に取り組むことになったのでしょうか?
福生市 :東京都市長会が主導した実証実験として「学童クラブ入所申請のオンライン化」が取り組まれることになったのが、本市としても手を挙げたきっかけでしたね。
昭島市 :令和3年度も東京都市長会主導の事業でLoGoフォームを試験運用していました。直感的にも使いやすかったので、今回担当課も一緒にチャレンジしてみようと思いました。
羽村市 :羽村市でも、東京都市長会が主体となり手続きのオンライン化を進めていたことが、一緒に取り組んだ経緯でした。学童クラブの入所申請という切り口についても、保護者の方の手続き負担も大きいと感じていたので、担当者としてもオンライン化にも取り組みたいと思っていたことも大きいです。
複数自治体で情報交換をしながらオンライン化に取り組む
ー東京都市長会様が主導した実証実験が今回3市様が同時にオンライン化を進めるきっかけとなったのですね。取り組む過程で、自治体同士連携されたことはありますか?
福生市:はい、何度か本事業に参加している自治体同士での意見交換・ワークショップの場や、オンラインでもLoGoチャット上で会話が可能なグループがあり、チャット上でも意見交換ができました。LoGoフォームは、情報所管部署でなくても操作が簡単なので、今回の繋がりを機に担当者同士で細かい設定などを電話で聞いたりもできました。業務を一番よく理解している現場担当者が自分で手を動かしながら、他市さんにヒアリングできると、改善のスピードも高まりましたね。
羽村市 :そうですね、あとは、昭島市さんが先にフォームを作成されていて、テストページをLoGoチャット上で共有していただいたので、公開前のページを作成段階で閲覧できたのも非常に参考になりました。同じシステムを使っているので、それぞれの質問項目でどのような設定をすると住民にとって分かりやすいフォームになるか意見交換ができたのもよかったと思います。
羽村市:もともと、令和3年度に多摩市さんが学童クラブ入所申請をオンライン化された経緯もあったので、取り組みやすさもあったと思います。多摩市さんのフォームはLoGoフォームのテンプレートにも挙がっていたので、多摩市さんや昭島市さんのフォームを参考にしながら、意見交換しつつ内容を改善できたのもよかったと思います。
オンライン申請導入後、約2割~4割程度がオンラインで申請
ーみなさま、同時期に同じシステムでオンライン化に取り組むからこその連携ですね!実際にオンライン化をした後、どのような変化がありましたか?
福生市:結果として、全体の37%がオンラインでの申請となりましたが、市役所窓口での対応件数が大きく減ったことが大きな効果だと感じています。もともと学童クラブで申請される方は先生とお話されたい方も多いので学童クラブの件数はあまり変化がなかったのですが、市役所窓口に申請に来る方は申請のためにわざわざ来庁していたので、オンライン申請をご利用いただけた印象です。職員としても窓口での対応時間が減ったことで他の業務に時間を使うことができました。
昭島市:昭島市では、学童クラブ入所申請を開庁時間だけでなく、夜間と土日にも市の窓口で受付をしていましたが、その時間に来る人が明らかに減った印象です。夜間と土日の時間帯に申請を行う方は、やはり平日日中働かれていることが多いので、そうした方々にオンライン申請を利用していただけたのではないかと思っています。
羽村市:羽村市の結果としてはオンライン申請率は38.9%で、福生市さん、昭島市さんと同じく市の窓口に申請で訪れる方が目に見えて減ったという感覚があります。実際に窓口にいらっしゃった方も、オンラインで申請できることについて案内をすると、今後はオンラインで申請したいというお声もあり、やはりオンライン化のニーズは高いということについて再認識することができました。
ー3市様共通して、窓口のご負担軽減につながったのですね。負担軽減のために特に工夫した点はありますか?
福生市:紙の申請書をベースにして申請フォームを作成しましたが、紙をそのままうつすのではなくて、申請者の方が迷われないようにわかりやすく注意書きを入れたり、記入例をすることで入力しやすいフォームの作成を心掛けました。住民の皆様への周知の仕方としては、広報誌に掲載をしたり、ホームページのTOPページにお知らせを掲載したり、毎月保護者の方へ配布しているお便りでお知らせをしました。
昭島市:昭島市で工夫したポイントとしては、提出書類の不足がないように、条件ごとで必要な添付書類を分けて表示をするなど工夫して設計しました。結果として、ほとんどの方に正しく必要な書類を添付していただくことができました。
羽村市:羽村市でも、該当する方が該当する書類を漏れなく提出できるように条件分岐を工夫して設計しましたね。そのほか、従来よく質問を受けた部分については、オンライン上で赤字にして注意書きを入れるなど、問い合わせや不備軽減のためのわかりやすい設計を心掛けて作成に取り組みました。
オンライン申請利用者の満足度は95%以上!
ーありがとうございます。そうした工夫もあって、利用者の満足度も非常に高い結果だったんですね。今後オンライン化に取り組んでいきたい手続きはありますか?
福生市:オンライン化が先行している近隣自治体では、多岐にわたる手続きのオンライン化をしています。同じくLoGoフォームを活用していたので、公開されている手続きをチェックしながら福生市でも参考にしていきたいです。
昭島市:とにかく網羅できるものはすべてオンライン化することにチャレンジしていきたいです。バーチャル市役所とも言うように、市民が市役所に来なくても手続きができるような市を目指していきたいと思っています。その際、他の自治体で先行して取り組んでいるような手続きのオンライン化事例があれば、どんどん使っていきたいですね。
羽村市:羽村市においても、住民の方が来なくても良い、いわゆる「来させない窓口」を実現していきたいと思っています。
複数自治体で連携し、行政手続オンライン化に取り組む意義
東京都市長会事務局
東京都市長会の活動概要
東京都市長会は、多摩の各市間の連絡調整を図るとともに、市政の円滑な運営と向上を期し、もって地方自治の発展に寄与することを設置目的としており、その活動の一環として、多摩地域の諸課題の解決に向けた調査研究・政策提言等に取り組んでいます。
新型コロナウィルス感染症拡大を契機に、官民問わずデジタル化の必要性が顕在化した中、東京都市長会では、行政デジタル化の推進を多摩地域の自治体が直面する共通課題と捉え、令和3年度から政策テ−マとして「多摩地域における行政のデジタル化」を設定し、取組を進めています。
今回の実証実験の背景
令和3年度は、広域連携の効果が見込まれ、かつ住民サ−ビスの向上と職員の業務効率化を実現していくことを念頭に「行政手続のデジタル化」を具体的な取組のテ−マとして定め、学童クラブの入所申請オンライン化に向けた実証実験を行いました。令和4年度は、職員の知識向上研修や妊娠の届出のBPRについての実証実験のほか、学童クラブの入所申請においては、令和3年度の取組で得られた知見の深化と横展開を目的に、申請後のバックヤードでの処理も含めた、学童クラブ入所手続のより一層のBPRに取り組みました。
今回の実証事業を複数自治体で実施した効果・反響等
ワ−クショップでは八王子市、昭島市、福生市、羽村市の4自治体が集まり(他社オンライン申請ツールを使用した自治体を含む)、現状分析や課題共有を行うとともに、令和3年度の知見を踏まえた対応策等を議論しました。実証実験の結果、全自治体において当初の想定を上回るオンライン申請の利用があり、窓口混雑の軽減が図られました。また、帳票を申請者にとって分かりやすく見直したことで市民の利便性向上につながるとともに、職員の業務においてもAI−OCRやRPA等の導入により、一定程度の業務効率化を図ることができました。一方で、デジタル機器の精度と動作確認に関する課題、また、オンライン申請と紙申請が併存することによる非効率性など、今後検討すべき課題についても明らかとなりました。このような、多摩地域の全ての自治体にとって有益な成果や気づきが得られたのは、今回の実証実験にご協力いただいた各自治体の職員の皆様が、多忙な通常業務と並行しながら、より良いものを生み出すため、前向きかつ精力的に業務の見直しに取り組んでくださったからこそだと考えています。
今後について
令和4年度までの取組において、行政手続のオンライン化に関する一定の知見は得られたものの、より一層の行政のデジタル化の推進に向けて、今後も取り組むべき課題は多くあります。
東京都市長会は、今後も各自治体とともにデジタル化の取組を進めることにより、多摩地域の住民の利便性向上と職員の業務効率化を目指してまいります。
昭島市様、福生市様、羽村市様、東京都市長会様、貴重なお話をいただき、ありがとうございました!
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