【LoGoチャット導入事例】福井県鯖江市 庁内への浸透は「足で稼ぐ」 ボトムアップの地道な活動で利便性を訴求

眼鏡の世界的産地である福井県鯖江市。

オープンデータの活用に日本で初めて取り組んだ自治体としても知られています。現在ではICTを活用した業務改革も積極的に進めていますが、その成功の裏には担当者による地道な普及活動がありました。

(取材日:令和3年8月17日)

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お話をうかがった方

総務部デジタル推進課 左近亮太氏

 

福井県鯖江市

◆人口:6万9353人(令和3年4月1日現在)

◆世帯数:2万5168世帯(令和3年4月1日現在)

◆予算規模:258億4800万円(令和3年度当初)

◆面積:84.59km²

 

■ デジタル推進課の業務内容について教えてください。

ネットワークの保守・運用、職員の業務改革・改善をはじめICT関連の業務を担当しています。電子申請や保育ICT化など、市民サービスのDXに関する各担当部署の取り組みへの支援も行っています。

 

■ LoGoチャットを導入した理由や背景について伺えますか。

LGWAN接続系とインターネット接続系の分離により、作業効率や利便性が低下しており、業務改善の面で大きな課題を抱えていました。たとえば、デジタルカメラで撮影した写真を共有したい場合には、一度インターネット接続系の端末にファイルを入れてウイルスチェックをした後に、LGWAN接続系端末に転送する必要がありました。LoGoチャットは、LGWAN接続系でスムーズにコミュニケーションが行えるという点で、非常に魅力的でした。

そこで、2020年の2月に一部の職員限定でトライアル導入を開始。同年4月には全正規職員へアカウントを配布しました。さらに2021年度4月より臨時職員を含めた希望者全員に対象を拡大し、本格導入をスタートしました。

 

■ 導入に何を期待されていましたか。

チャットではメールや電話に比べて気軽にやり取りができるため、相談や承認、部署が異なる職員との連携、不在対応など、業務内のコミュニケーションに費やしている時間の削減につながると期待していました。また自治体のユーザーグループに参加できることもLoGoチャット導入のメリットの1つであると捉えていました。

 

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■ 現在のLoGoチャットの活用状況を教えてください。

災害など有事の際の情報共有や意思決定の迅速化に貢献しています。やはり写真のやり取りは非常に便利になりましたね。実際に大雪の被害が発生したときには、スマホまたはタブレット端末で現場の写真を撮影してすぐに状況を共有することができました。

また、避難所や基地開設の報告、基地職員とのコミュニケーションなどは災害対策本部のトークルームで行うことで、電話での連絡が不要になり、また複数人に対して一度に情報を共有することができるようになりました。LoGoチャット上で現場での対応状況について共有しておけば、業務の引き継ぎも非常にスムーズです。外からPDFなどの資料を確認できるのも助かっています。

 

一番便利になったと思うのは、その場にいない職員との情報共有ですね。特別定額給付金や新型コロナウイルスのワクチン接種に関する業務をはじめ、部署をまたいだ職員間のコミュニケーションもやりやすくなりました。まずはLoGoチャットでコミュニケーションを取るという習慣が定着しつつあります。

 

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災害時の際の情報共有や意思決定が迅速化

 

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新型コロナワクチン関連のトークルーム

 

 

■ ユーザーグループは利用されていますか。

情報システム関係のルームは特に便利に利用しています。他の自治体の悩みや課題、その解決策までわかるのでどれも勉強になっています。

 

■ 導入後、庁内での浸透において工夫されたことはありますか。

ボトムアップでの浸透が大切と考え、まずは「足で稼ぐ」ことに重点を置いていました。100名ほどの職員に対してそれぞれ個別に訪問し、1人1人の端末にLoGoチャットをインストールして使い方を説明してまわりました。そうして使い始めた職員が「LoGoチャットって便利だよね」という認識を持ってくれれば、次第に口コミで利用者が広がっていきます。普及活動は大変でしたが、職員の業務改善は結果として市民の皆様のためになることだと信じて進めていきました。

 

■ 利用を反対される方はいらっしゃいませんでしたか。

LoGoチャットの導入による業務の負担増を懸念する声がありました。ただ、本格導入後には「使ってみたら便利だった」という感想が聞こえてくるなど、実際に使ってみることでLoGoチャットの有用性を実感しているようです。

 

■ LoGoチャットの利用にあたって何かルールは決められていますか。

皆がなるべく気持ちよく使えるように、「夜中は使わない」「誹謗中傷はしない」「投稿を見たら返事をする」などといった最低限のマナーのようなものは職員内で共有しています。

 

■ 導入したLoGoチャットを今後どのように活用していきますか。

これまでメールでやり取りしていた内容を含めLoGoチャットでできるコミュニケーションはすべてLoGoチャットへ集約し、既存のメールは廃止することを検討しています。ただ、LoGoチャットの操作に慣れていない職員やさまざまな機能があることに気づいていない職員もいますので、LoGoチャットに期待していた効果が最大限得られるように、今後はLoGoチャットの使い方に関する研修を実施していく予定です。

 

■ 今後の行政DXの方針をお聞かせください。

鯖江市は令和3年5月12日に「鯖江市DX推進基本方針」を策定しました。同方針においてDXは、ICT技術の活用や各種デジタルデータの連携により、人々の生活をより良いものへと変革するものと定義しています。単に職員の業務をデジタル化するだけでなく、住民の皆さまに良いと思ってもらえるような活動につなげていければと考えています。